白龍の後継者

私がこの世界に来たことから、今朝、部屋で起こったことまで全ての説明を行う。

その間、私は怯えていた。ぴくりともしない当主の表情、あやかし独特の雰囲気なんだろうか?

人間の私には重く感じた。


「ーー以上が事の全てです」

「うーん。あやかしの世界に人間が迷い込むのはよくある事だが、これまでとは状況が大きく違うな。人間の娘、名は橙花といったか?」

「…は、はい!」


ようやく合った目と目。恐怖から緊張へと気持ちが変わる。

差し込む光が深紅の瞳がゆらりと揺れ、まるで小さな炎をやどしているかのようだ。


「君はどうしてここに来たのか、その理由を知っているか?」

「いえ…。気づいたらここにいたので」

「そうか。金色の瞳を人間の娘か。ふっ、面白い」

「おも…?」


面白いって言いました?


「当主、こんな大変な時にふざけないで下さい」

「ふふっ、すまない。長いこと生きていてこんな事は初めてでな。つい、舞い上がってしまった」

「全く。橙花、すまない。見てのとおり、当主は年甲斐もなく好奇心旺盛でな」


冷静を保っていた当主の表情はすっかり心をくすぐられた幼い子供の様になっていた。


「はぁー……」


瑞紀さんは呆れるように大きなため息を吐く。


目の前に北条家当主がいるにも関わらず堂々と…!?

しかもため息をしたのは瑞紀さん。こうなるとさっきまでの緊張って何だったんだろうって気持ちになっちゃうな。

私までため息が出ちゃいそう。