私が使わせて頂いた部屋の隣には菖さんがいる。挨拶しに行こうと部屋の前まで来たが、ちょっとした葛藤をしている。

物音がしたから起きていると思うけど、朝早いし、迷惑かもしれない。もう少し時間が過ぎてからまた来よう。そう思って部屋の襖に背中を向けた瞬間、スーッと開ける音が聞こえてきた。


「うーん…橙花か。早いな」

「あ、菖さん!?」


大きな欠伸をしてまだ眠そうな顔をしている菖さん。寝癖で跳ねまくっている銀色の髪、着物は帯が緩くなって、今にもずり落ちそうなだらしない格好になっている。

昨日までの彼と同一人物とは思えないくらいオーラを感じられない。


「ふぁ〜…眠いな。朝はこれだから苦手だ」

「あ、菖さん!」

「なんだ?そんなに大声を出して」

大声を出されても物応じせず、冷静なトーンで話す菖さん。私は反対に冷静でいられていない。その理由は……

「服!」

「ふく?」

「着物!!早く直してください!」


着崩れた着物から肌が見え、私はパニック状態となっていた。年頃の女の子には刺激が強すぎる。