一粒の涙が頬を伝うのと同時に目を覚ました。


窓からこぼれた光がいつもと変わらぬ朝を告げる。まだ覚醒しきれていない頭で現状を把握する。


「そっか、私…」


昨日、学校の帰りに水龍神社によって怪しげさ声を聞いた。

気づいた頃には空想だと思っていたあやかしの世界にいた。突然襲ってきたあやかしから私を救ってくれたのは北条菖さんという同じくあやかしの青年だ。


私は今、菖さんの屋敷にいる。見慣れない和室の景色が物珍しさを感じる。


一度は起き上がったが、また布団に横たわる。左右に向きを変えたり、仰向けになって大きく伸びたあとは、ふーっと大きく息吐いた。ようやく落ちついた。


寝ていた布団を片して用意された着物に着替える。


やっぱりまだ慣れないな。左右の向きとか帯の締め方とか。分からないことが多すぎる。髪はスクールバッグに入れていたヘアクリップで簡単にまとめて何とか人前には出られる容姿に仕上がった。