龍神様、龍神様。私の話を聞いてください。


いつもこうして、水龍神社で龍神様に話しかけている。




ーー小さい頃から両親に水龍神社の龍神様についての神話を聞かされていた。

昔むかし、人間とあやかしは同じ世界に住んでいた。お互いに切磋琢磨しながら、それはそれは穏やかな日々を送っていたそう。


ある日、一人のあやかしが世界をあやかしだけのものにしようと企んだ。黒いオーラに包まれたあやかしはまさに闇そのものだった。


そのあやかしは嫌われ者で、人間からもあやかしからも冷たい目で見られていた。

人間とあやかしは互いに手を取り合うことを選んだ。しかし、そのあやかしだけは違う。人間を嫌い、仲間であるあやかしすら敵視して、やがて空は暗闇に包まれ、ついには生活に必要な水までを黒く汚されてしまった。

あやかしは水無くても困らない。寿命が長い分、多少の断食は耐えられる。しかし、人間は違う。水分を取り、食べ物から栄養を常に取っていないとやがて息絶えてしまう。

人々は綺麗な水を求めて旅をした。小さな水源から出た水を皆で分け合い、少しでも命を取り止めようと必死だった。

途中、たくさんの命が天へと旅立った。


その光景に耐えられなかった、一人のあやかしが皆に言いました。


『人間を護るためにここから立ち去ろう。これ以上、彼らを犠牲にはできない』


そのあやかしは人間ととても仲が良く、良好な関係を築けたのも彼のおかげでした。