「そうだ。我々はそれらの類を異能とよぶ。だがあやかしよってその力は異なる。俺のように傷を癒すもの、瑞紀のように地を操るもの、下級のあやかしならせいぜい火や水を操るか物を少し動かすくらい。強いものであればその火や水などは使えば村ひとつ滅ぼせる」


その瞬間、ゾクッと背すぎが凍るような感覚に襲われる。あやかしを庇ったことがどれだけ危険だったか、後になって身をもって知った。

二人が必死になって止めた理由が今、ようやくわかった。下手をすれば本当に命を落としていたんだ。

顔が畳の方に向き、目を合わせるのが怖くなってしまった。震える唇を一生懸命動かして二人に謝罪をする。


「…ごめんなさい。そんなに危ないものとは知らずに、あんな身勝手な行動を取ってしまって」

「橙花…」

「菖、同情をするな!お前はすぐにそうやって。だから当主からお前は妖に向いていないなど言われるんだ」

「しかし瑞紀、橙花は望んでこの世界来た訳ではない。危険な状況ではあったが、こうして反省しているではないか!?言葉を返すが、お前はもう少し思いやりというもの持て!また母君を泣かせるぞ?」

「うぅ…それを言うな。ゴホン。人間の娘、お前のしたことは危険極まりないのない行動だ。だが、その行動が一人のあやかしの命を救った。あぁ…今回は菖に免じてこれ以上は何も言わん」


瑞紀さんの言う通り、私がしたのはとても危険な行動だった。本当なら私が命を落としていたかもしれない。

だけど、菖さんはそんな私を異能使って救ってくれた。この胸を痛みを忘れないように、肝に免じてこれからは救ってくれた命を大切にしよう。