「こちらもすまなかった。ふっ、君は変わった人間だな」

頬に付いていた泥を細い指先でほろい、初めて笑顔を見せた菖。触れられた部分にほんのりと熱が残る。

罰を受けたあやかしも彼の力によって傷が癒え、ゆっくりと起き上がる。


「人間の娘、何故助けた?俺たちはお前を食おうとしたのだぞ?」

「自分のせいで誰かが傷つくのは見たくなかったんです。あやかしさん、傷が治って良かったですね」


その言葉が嬉しかったのか、フッと笑みを浮かべ、その場から消え去っていった。他のあやかしたちもそれぞれの住処に帰り、私と菖さん、その式だけがその場に残る。


「本当に変わった子だ。あやかしなんぞ、生まれて初めて見たというのに、同じ生き物として見てくれるとは」

「珍しいな。菖が人間に興味を持つとは。あやかしにすら興味がないというのに」

「ただの興味本位だ。それより瑞紀、これから屋敷へ戻る。もちろん橙花を連れて。当主には俺から話そう」

「はっ」