灯台があるその場所は、とても綺麗でのどかで広々とした場所だった。海の近くにはゴツゴツした岩がたくさんあって、少し上を見ると白いベンチが置いてある。ちょうど二人で座れるベンチだ。

「すごい!あんな所にベンチがあるよ!」

友人や恋人同士で来てる人達がみんな各々に座っては降りていく。ゴツゴツした岩を登ったり降りたりするのは結構大変そうで、それもまた楽しそうに見える。

暗い時間になるまでにはもう少し時間がある為、彼女と二人で散歩をしながら灯台へ登ることにした。

結構な高さがある灯台は登りきる前に息を切らしていた僕を見ては、揶揄うように軽々と先へ上がっていく。幽霊は疲れないらしい。なんてご都合主義な身体なんだ、羨ましい。

登りきった頃には汗だくで息をたくさん吸っては吐いてを繰り返しながら見上げた灯台からの景色は、とても綺麗だった。

疲れるだけあってかなりの高さがある分、一望を見渡せるくらいだ。僕達はさっきまであそこにいたのだろうかと、彼女は楽しそうに笑う。

ここから見る星空はとても綺麗なんだろう。ただこの灯台はあと少しで登る時間が終わってしまう。やっぱり星を見るならあのベンチだろうか。

灯台からの景色を満喫した後は、ゆっくりとした時間をあの白いベンチで過ごした。日が沈む景色は一つ一つが違って見える。

僕と君は何も言わずにただその時間を過ごしていた。

「優太、見て。すごい綺麗…」

「うん、本当に綺麗だね」

「私たちの地元も負けてないけど、こんなに広々とした所で見る星空は最高だよ」

「また来年もここに星を見にこよう」

自然と”また来年も”そんな言葉が出た。なにも考えず、ただこの幸せな時間を感じて出た言葉だった。そんな彼女は静かに頷いて僕を見つめる。そんな彼女を僕も見つめた。

……あれ、暗いからだろうか、涼花の身体が透けて見えた。