「ねぇ、優太。私ね、したい事がたくさんあるの!」

「…例えば?」

「今日のお祭りに行きたい!あとは花火もしたい、有名なクレープ屋さんに行きたいし、優太としたい事たくさん!」

全部がとても可愛らしい事ばかりで、幼い涼花ちゃんを思い出した。大人になった涼花は相変わらず明るくて、可愛いらしい人だった。

「そういえば今日、お祭りなんだ。忘れてた。」

「お祭り忘れるとか…もしかして友達いないの?」

僕の痛いところを突いてくる言葉に苦笑いする。

「友達はいるけど、地元に帰ってくるのも久しぶりだし。」

そんな苦しい言い訳を口にしては特に気にした様子のない彼女は、勢いよく立ち上がる。

「じゃあ、18時にまたここで待ち合わせね!私とお祭り行こう!」

「別にいいけど、大丈夫なのそれ」

地元で生まれ育った僕達にとっては顔見知りも多少はいるはず。涼花の顔を見たら驚く人が多いんじゃないかと心配になった。

「大丈夫だよ、私小さい頃に亡くなってるし私の事を知ってる人なんて微々たるもんでしょ!」

「そんな軽い感じで言われても反応に困るんだけど…」

何とかなるか、と軽く溜息をつきながら一旦家へと帰る。さっきまでの出来事が夢のようにも感じる。でも今までずっと一緒にいた友達のような感覚さえある。

「これはデートなのか…?」

彼女がいた事もあったが、大学に入ってはそれどころじゃなくなってしまった。サークルに入って楽しい大学生活とは程遠い日常を送っていたし、彼女を作る余裕もなく数年、久しぶりの女性と出かけるという事実に、少しだけ心が踊った。