「優太、今日は本当にありがとう。すごく楽しかった。美味しいものをたくさん食べて、私の願いもたくさん叶えてくれて、それと…あ、花火、線香花火楽しかったよね、お祭りも…」

「待って、なんでそんな最後みたいな言い方するの」

「…だって今日が最後だから」

「え、だって、ひと夏って言ってたじゃん、まだ夏はあと少し残ってる…そんな、え、だって」

「今日ね、私の誕生日なの。優太はたまたまこの日を選んでくれたんだと思うけど、最高の誕生日プレゼントだった!」

そんないつもと変わらない笑顔で言わないでくれ。僕はそんなつもりで君をここに連れて来たわけじゃない。これからあと数日間も君を楽しませたくて、考えてる事があるんだ。

そんな思いで彼女の手を握る。そこには見えるのに触れられない君がいた。

「急すぎる…、涼花としたいことまだ残ってるのに、」

僕にも触れられない彼女の手は僕の頬に触れた。感覚はないのに、そこがただ温かい。

「ごめんね、優太。私ね、また願ってみようと思う。また優太といつか出逢えますようにって」

そんな言葉に僕は涙が止まらなかった。頷きたいのに、君がどんどん消えていく姿に、首を横に振った。消えないでほしいと、ただ願った。抱き締めたい、君に触れたのは、あの日のお祭りだけだ。

「涼花、僕は君に助けられた、頑張って医者になる。大学も復帰する、だから、いつか絶対戻ってきて。それまで空から見守ってて。」

今更、あの時の君が言った冗談を口にする。

彼女は今までにない笑顔で綺麗な星空と共に消えていった。