しばらく僕と凪乃波は歩いた。
僕と凪乃波は河川敷に来た。
僕は持っていた本を読み、凪乃波は太陽に照らされた川を見つめる。
「そういえば、凪乃波はここに何度か来たことあるの?」
前に凪乃波がここにきて懐かしいと呟いていたので尋ねた。
「ここは、私の思い出の場所」
凪乃波は微笑んだ。
「小さい時にこの辺に住んでたの。……そのときによくここで遊んでた」
僕は昔のことを思い出す。
そういえば、夢に出て来るあの子と最後に会ったのは今日のように快晴で太陽が眩しくて、川を照らしていた。
「……私が引っ越す前日もすごく暑かった。今日みたいだった……ねぇ、爽夜。──私のこと、思い出してくれた?」
そう言われた瞬間、夢に出てきた少女『なの』と凪乃波が重なった。
「──え?」
驚くことしかできなかった。
「爽夜は覚えてるかわからないけれど、あのとき遊んでたのは私。爽夜、久しぶり……っ!」
凪乃波は満面の笑みで僕を見た。
「信じられない……凪乃波があのときの『なの』?」
「そうだよ。信じられないの?」
「だって……名前だって『なの』って言われたから思い出したときは凪乃さんがあのとき会ってた子なんだと思ってた……」
そう言うと、凪乃波は少し切なそうな顔をした。
それに焦り、僕は口を開く。
「あ、えっと……──」
「あのときは、凪乃ちゃんと私はそっくりだった。でも、中身は全然違った。凪乃ちゃんの方がなんでもできて友達も多かった」
凪乃波は拙い言葉を紡ぐ。
「年子だから、幼稚園も一緒に通ってたけど、凪乃ちゃんはいつも誰かに囲まれてた。でも、私は友達のつくり方がわからなくて、河川敷で遊んだ爽夜だけには嫌われたくなくて……初めて誰かと友達になれるかもって思って……」
ぽつりぽつりと話す凪乃波。
「凪乃ちゃんの真似をすれば友達になれるんじゃないかって思い始めて爽夜に名前を聞かれたときに『なの』って名乗った……だから、爽夜も勘違いしちゃったのかな?私と凪乃ちゃんのこと」
僕は静かに頷いた。
「でも、覚えててくれてよかった。忘れてたらどうしようかと思ったよ」
凪乃波はははっと笑った。
「……実は僕、毎年夏になると凪乃波と遊んでたときの光景が夢に出てくるんだ」
そう言うと、凪乃波は驚いた表情を見せた。
「私が夢に……?」
「うん。でも、名前も顔も覚えてなくて……声しかわからなくて、いつも僕の名前を呼んでた」
僕も精いっぱい笑った。
「今は現実なのか疑いたくなるくらい……まだ夢見てるんじゃないかってくらい嬉しい。なのと……凪乃波と会えてめっちゃ嬉しい」
そう言うと、凪乃波は僕の頬に軽くキスをして。
「夢じゃない、ちゃんといるよ……!」
僕の顔は赤く染まっていった。
驚きで凪乃波の顔を見ると、凪乃波の顔もまた薄紅色に頬を染めていた。
先ほどまで快晴だった空に入道雲がかかり、爽やかな風が僕たちを包み込む。
凪乃波のミルクティーベージュの髪がふわりとゆれる。
僕が持っていた本のページがめくれる。
もう夢ではない。
けれど、いつでも夢に見るだろうあの日、凪乃波に会った日のことを。
無邪気に僕の名前を呼んでいた凪乃波の姿を。
『──……爽夜!大好きっ!』
きっと、僕も凪乃波を見たら同じことを言うのだろう。
いつでも夢の中に初恋は眠っているのだ──。
僕と凪乃波は河川敷に来た。
僕は持っていた本を読み、凪乃波は太陽に照らされた川を見つめる。
「そういえば、凪乃波はここに何度か来たことあるの?」
前に凪乃波がここにきて懐かしいと呟いていたので尋ねた。
「ここは、私の思い出の場所」
凪乃波は微笑んだ。
「小さい時にこの辺に住んでたの。……そのときによくここで遊んでた」
僕は昔のことを思い出す。
そういえば、夢に出て来るあの子と最後に会ったのは今日のように快晴で太陽が眩しくて、川を照らしていた。
「……私が引っ越す前日もすごく暑かった。今日みたいだった……ねぇ、爽夜。──私のこと、思い出してくれた?」
そう言われた瞬間、夢に出てきた少女『なの』と凪乃波が重なった。
「──え?」
驚くことしかできなかった。
「爽夜は覚えてるかわからないけれど、あのとき遊んでたのは私。爽夜、久しぶり……っ!」
凪乃波は満面の笑みで僕を見た。
「信じられない……凪乃波があのときの『なの』?」
「そうだよ。信じられないの?」
「だって……名前だって『なの』って言われたから思い出したときは凪乃さんがあのとき会ってた子なんだと思ってた……」
そう言うと、凪乃波は少し切なそうな顔をした。
それに焦り、僕は口を開く。
「あ、えっと……──」
「あのときは、凪乃ちゃんと私はそっくりだった。でも、中身は全然違った。凪乃ちゃんの方がなんでもできて友達も多かった」
凪乃波は拙い言葉を紡ぐ。
「年子だから、幼稚園も一緒に通ってたけど、凪乃ちゃんはいつも誰かに囲まれてた。でも、私は友達のつくり方がわからなくて、河川敷で遊んだ爽夜だけには嫌われたくなくて……初めて誰かと友達になれるかもって思って……」
ぽつりぽつりと話す凪乃波。
「凪乃ちゃんの真似をすれば友達になれるんじゃないかって思い始めて爽夜に名前を聞かれたときに『なの』って名乗った……だから、爽夜も勘違いしちゃったのかな?私と凪乃ちゃんのこと」
僕は静かに頷いた。
「でも、覚えててくれてよかった。忘れてたらどうしようかと思ったよ」
凪乃波はははっと笑った。
「……実は僕、毎年夏になると凪乃波と遊んでたときの光景が夢に出てくるんだ」
そう言うと、凪乃波は驚いた表情を見せた。
「私が夢に……?」
「うん。でも、名前も顔も覚えてなくて……声しかわからなくて、いつも僕の名前を呼んでた」
僕も精いっぱい笑った。
「今は現実なのか疑いたくなるくらい……まだ夢見てるんじゃないかってくらい嬉しい。なのと……凪乃波と会えてめっちゃ嬉しい」
そう言うと、凪乃波は僕の頬に軽くキスをして。
「夢じゃない、ちゃんといるよ……!」
僕の顔は赤く染まっていった。
驚きで凪乃波の顔を見ると、凪乃波の顔もまた薄紅色に頬を染めていた。
先ほどまで快晴だった空に入道雲がかかり、爽やかな風が僕たちを包み込む。
凪乃波のミルクティーベージュの髪がふわりとゆれる。
僕が持っていた本のページがめくれる。
もう夢ではない。
けれど、いつでも夢に見るだろうあの日、凪乃波に会った日のことを。
無邪気に僕の名前を呼んでいた凪乃波の姿を。
『──……爽夜!大好きっ!』
きっと、僕も凪乃波を見たら同じことを言うのだろう。
いつでも夢の中に初恋は眠っているのだ──。