いつもと変わらない日々。
 凪乃さんのことが気になり、凪乃さんにさりげなく川の思い出を聞いてみたが。
『──川?この前も言ったけど、自然で一からつくられてきたものだって考えると神秘的で胸がときめくの~。あ、思い出かぁ。パパと釣りに行ったこととかかな~』
 ダメだ。
 一向に昔のことを覚えていない。
 そうなれば、残るは凪乃波。
 凪乃波なら姉の凪乃のことを一番わかっているのではないか。
 凪乃波はどこにいるのか。
 図書館にならいそうだ。
 そう思い、図書館に行くと予想は当たっており、凪乃波は真剣に本を読んでいた。
「凪乃波、ちょっといい?」
 声をかけると凪乃波は不思議そうな顔をした。
「なに?深刻そうな顔をしてるけれど……」
 そんな顔をしていたのかと、自分の顔を手で覆う。
「い、いや……深刻っていうか……」
 なんて言葉で表現していいのかわからず挙動不審になってしまった。
 僕と凪乃波は図書館を出た。
「それで?なにかあったの?」
 今日の凪乃波の服は白いブラウスに黄色いパンツだった。
 スタイルのよい凪乃波にはよく似合っていた。
「えっと、凪乃さんのことなんだけど、凪乃さんって川に思い出あったりするかわかる?」
 そう聞くと、凪乃波はいぶかしげな顔をする。
「川?それに凪乃ちゃん?どうして急に?」
「……小さい時に僕が遊んでた子の名前が『なの』なんだ。だから、少し気になって……」
 そう言うと、凪乃波の瞳が少し揺らいだ。
「……少し私について来てほしい。一緒に本でも読もうよ。いい?」
 僕はよくわからないまま頷く。
「うん、わかった。じゃあ、本を用意してくるね」
「──……やっと……たの?──」
 凪乃波がなにかポツリと呟いていたようだが、最初と最後しかうまく聞き取れなかった。
「なにか言った?」
「ううん、なにも」
 僕は首を傾げるが凪乃波は何事もなかったかのように荷物をまとめる。
 僕は駐輪場に行き、自転車を押して歩きだした。