少しずつ暑くなり始め、今年もまた夏が僕たちを呼んでいる。
　カーテンの隙間からふわりと風が吹く。
『──……爽夜(そうや)！』
　明るい声が僕の名前を呼ぶ。
　その声で目が覚める。
　……また、同じ夢だ。
　最近、小さい時に遊んでいた子の夢を見る。
　その子の顔も名前もよく覚えていない。
　覚えているのはいつも家の近くにあった河川敷で水遊びをしていたことだ。
　でもその子は僕が五歳のときの夏に姿を消してしまった。
　毎年、夏になるとその子が夢に出て来る。
　小さい時の思い出をいつまで引きずっているんだと自分でも思う。
　あの子がいなくなってから、当時は毎日河川敷に行ってまた会えるのを待っていた。
　きっともう会えないとわかっているのに。
　さよならだって頭ではわかっているのに。
　そんなことを思いながらベットから起きて顔を洗う。