冬。
背伸びしようとする女子は、色気を出そうと必死だ。
また、恋に積極的になり、クラスや部活にいる男子の話題で盛り上がる事が増えた。
冬と言えばクリスマス、その次はバレンタインデーがやってくる。
間に飛び込むテストを邪魔者扱いしながら、懸命に気持ちを伝える計画を立てるのだ。



 しかし自分には、そうしたいと思える相手がいなかった。
見つけたいと思っていても引っ込み思案で、いつも誰かの恋愛相談にのる事が多かった。
とは言っても、男心を擽ったり、上手い告白の術を決して知らない。
大抵、同じ事を伝えるばかりだった。
もっと真っ直ぐに伝えてみたらどうか。
時間は、人が少ない放課後がいいのではないか。
好きなものを聞くなら、兄弟の好みを出しながらはどうか。
どれも偉そうにアドバイスをするが、自分には一つも経験がない事だ。
そして、自分もそうできればいいなと思う行動ばかりだった。



 ある週明けの登校日。
いつもと変わらず教室に入ると、口をきいてくれるはずの友達に相手にしてもらえず、戸惑った。
お弁当も、理由が分からず一人で食べる事になり、あまり箸が進まず初めて残してしまった。



 そして下校時間。
偶然、正門の近くで恋愛相談者の友達を見かけて声をかけた。
小学校高学年で同じクラスになり、仲良くしていた爽やかで気さくな女の子だ。
そんな友達が今日、一日浮かない顔をしていた事を知っていて、やっと声をかけるチャンスができた。
それまでは、複数名が友達を取り囲むように立ち、私に壁を作るように思えてならなかった。



 すぐ、金曜日の放課後に計画していた告白はどうだったのかと訊いてみる。
すると友達は目を尖らせ、涙目を浮かべて肩を強く押してきた。


「あんたの事が好きだって! ったく、何なの!?
聞こえてくるのは、あんたの事ばっかでさ!
どいつもこいつも、あんたにばっか目がいくの!」


耳を疑うばかりで声が出なかった。
何せ、友達が何の話をしているのか、全く分からなかった。
それが言葉になるよりも先に、首が勝手に横に振られていた。
誤解だと、直ちに伝えたかった。
なのにその隙を与えては貰えず、友達は間髪入れずに再び肩を押してきた。
その強さは先程の何倍か。動揺するのと重なり、足が崩れて転んだ。


「何よ! 大人気取りして! 生まれつき!? そりゃあ良かったわね!
だったらさっさと人気者らしく、男の一人や二人作れば!?
どうせあたしは、あんたと違って綺麗な髪じゃないガキっぽい女よっ!」