暇さえあればスクリーンを見下ろす人々が増えた時代。
そこには当然、自分も含まれている。
日陰が心地よく感じても、汗が綺麗に引いてしまう事はない。
昔は、日陰でこんなに汗ばむような気温ではなかった。
熱中症になるリスクが上がり、外での長時間の滞在は止められる程になった。
紫外線も強まり、肌へのダメージを幼少期から徹底するようになった。
そのお陰で、サングラスをかけたイカす園児を見かけるようになった。
可愛らしく、面白くもあるが、何だか信じられない光景でもある。
世界は、間違いなく変化している。



 喉を潤そうと、再びボトルを手にした。
炎天下に晒してしまっていたそれは、自分よりももっと汗ばみ、冷水とは程遠い。
数回喉を鳴らして流し込むと、ラベルに目が留まった。
この行為も、いつかの自分とは比較にならない。
将来、環境に優しい製品開発をしたいと思い始めてから意識するようになった、サステナブル・ラベルだ。
それが付いた商品を購入する事で、持続可能な原料の調達、環境や社会、生物多様性などの後押しに繋げられる。



 多様性と言えば、だ。
自然と少し、瞼が落ちる。
風が抜けるがらんとした景色に浮かんだのは、弟の顔だ。
今日は母と水族館に行くと言ってはしゃいでいた。
一緒に行こうと誘われていたが、疲れもあり、一人になりたかったのもあって断ってしまった。
少々機嫌を悪くさせたが、時間が経てばケロッと笑顔を取り戻すかわいいやつで、憎めない。
そんな弟から、卒業まで通うはずの一般の学校という居場所を奪ってしまった。



 そう捉える自分を、両親も弟も否定する。
否定してくれる。
きっと考え過ぎなのかもしれない。
それでも、今のようにふとした瞬間、思ってしまうのだ。



 リサイクルに出せるものは、これと、これと、これ。
燃やしてしまうのではなく、再利用できる事を考えるんだ。
そうすれば空気が綺麗になって、動物や花も喜ぶんだよ。
そんな事を楽し気に、やる気に満ちながら弟に教え込んだ事があった。
自分を好いてくれている弟は、興味津々になって話を聞いた。
そして全て試し、やり続けてくれた。
長期休暇中の自由課題では、SDGsの新聞を作って発表もした。
地球が苦しんでいる事。
その原因は温室効果ガスといって、中でも代表的に取り上げられるのが二酸化炭素の排出量の多さである事。
その多くは、人間によるものである事――だから、皆で協力して自然に優しくあろう。
そんな、小学校高学年ながらの熱いメッセージを周囲に発信した。



 それを機に、弟をからかう生徒が増えた。
当時、題材は教師にこそ高く評価され、周囲も拍手で称えたものだ。
しかし、休み時間では違った。