「真白。大丈夫。俺がいる。俺が、真白を守る。どんなことがあっても、一人にしない。俺にとって、真白は大切な人だから。君のすべてが愛おしくて、好き。もうどうしようもないほど、真白が大好きなんだ。だから、俺がいることを忘れないで」

 晨の手を涙が濡らしていく。

 涙は止まらないようだが、真白の意識はようやく晨に戻ってきた。

 濡れた大きな目が、晨をしっかりと見てくれている。

 唇の震えが止まっている。

「俺に気付いてくれて、ありがとう」

「……晨」

「一緒に帰ろう」

「か、える?」

「そう。二人の家に、帰ろう」

 晨は不器用な微笑みを浮かべる。

 涙を堪えているせいだ。

 真白が辛いのは、自分が辛いよりも、胸が痛む。

 息苦しくなる。

 自分の心の傷なんて、どうでもよくなる。

 真白には笑顔が似合う。

 晨は気付かれないように、多くの言葉を呑み込んだ。

 これ以上、真白を混乱させたくなかったから。

 想いをすべて言葉にしてしまったら、涙を堪えられなくなる。

 それでは、真白はまた不安定になる気がした。

「二人の家……」

「そうだよ。真白には、帰る家がある。俺が、真白のすべてを受け止める。真白の抱えているもの全部、俺にちょうだい。もう、一人で抱える必要はないんだよ」

 その言葉を聞いた真白の顔がくしゃりと歪み、勢いよく抱き着いてきた。

 晨はしっかり抱き留め、辛さでパンクしているであろう頭に頬ずりをする。
 
 しゃくり上げる真白の背中を撫で、落ち着くのを待った。