当日約束の時間に向かうと紅音さんは先についていた。
花火大会らしく紺色の浴衣を着て、髪も纏められていた。
来たことに気がつくとご機嫌な顔で大きく手を振ってきた。
僕は控えめに振り返しながら階段を下り合流を果たす。
「来ないか心配だったけど来てくれてありがとう」
「来なかった時の方がめんどくさそうなので」
「ひどーい、いくら優しい私でも泣いちゃうよ」
紅音さんは大袈裟に泣く真似をしながら言う。
「急がないと混んじゃうので行きませんか?」
紅音さんの言葉を無視して進みだす。彼女はこれくらいでも大丈夫だろうと実験的に雑に扱う。
「君、場所分かってるの?」
紅音さんは僕の行動に全く気にしている素振りがない。代わりにカウンターのような言葉が返ってきた。
「バカにしないで下さい。会場くらい分かりますよ」
流石に心外だった僕はムッとする。
「ごめんごめん言葉足らずだったね。普通に会場行っても人混みが大変だから人の少ない所に行こうと思うの」
紅音さんは"こっち"と僕の手を引く。
突然の事で思考の飛んだ僕はとりあえず草舟のように流されながらそのまま着いて行く。
集合場所からそのまま南下すれば会場に着くのだがそれより東へ進んだ所にある高台を登った。早歩きだったということもあり着く頃には二人とも軽く息が切れていた。帰りも同じ道を通ることに少し億劫になるが考えるのはやめにした。この辺りは高い建物や山などがないためこの場所からは市街地がよく見える。言われていた通りここで見る人は少なく僕たち以外に4、5組といったところであった。
着くと同時に僕はサッと紅音さんの手を離す。
また弄られるだろうなと思って彼女の顔を覗くが意外にも少し頬を赤くしていた。
一応僕も男として見られていたらしい。
「ここ開けてるし、会場からもそこまで離れてないからよく見られるみたい」
紅音さんは照れ隠しのように場所について語り出す。
みたい?
「誰かに教えてもらったんですか?」
「...うん友達にね」
素朴な疑問を投げかけたつもりだったが紅音さんの顔がさらに赤くなる。
「紅音さん大丈夫ですか?」
"大丈夫"と言っているが今日の紅音さんは何だがいつもと様子が違う。さらに聞こうと思ったがちょうど花火が上がり始めたので、聞くのをやめにしてそちらに集中することにした。
「彬人君・・・・」
花火の途中で紅音さんに肩を叩かれ、話しかけられる。しかし花火の音にかき消され聞き取れない。
「え、今なんていいました?」
僕はすぐに聞き返すが紅音さんはやっぱりなんでもないというジェスチャーをした。どうしたのだろうと気になったが彼女は再び花火の方へ顔を向けてしまった。
紅音さんが何を伝えようとしたのかはわからなかったが花火は無事終わり僕は彼女を家まで送ることにした。
帰り道に再び聞いたが紅音さんは答えようとせず、仕方がないのでずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「紅音さんは何で毎日のようにあの河川敷に来るんですか?」
「それは君をいじるのが楽しいからだよ」
僕にとっては花火の言葉よりも疑問に思っていたことだがあっさりと紅音さんは答えた。予想通りの回答が返ってきて納得しながらも、少し複雑な気持ちであった。
”今日は来てくれてありがとう”帰り際に紅音さんはそう言って僕と別れた。
花火大会らしく紺色の浴衣を着て、髪も纏められていた。
来たことに気がつくとご機嫌な顔で大きく手を振ってきた。
僕は控えめに振り返しながら階段を下り合流を果たす。
「来ないか心配だったけど来てくれてありがとう」
「来なかった時の方がめんどくさそうなので」
「ひどーい、いくら優しい私でも泣いちゃうよ」
紅音さんは大袈裟に泣く真似をしながら言う。
「急がないと混んじゃうので行きませんか?」
紅音さんの言葉を無視して進みだす。彼女はこれくらいでも大丈夫だろうと実験的に雑に扱う。
「君、場所分かってるの?」
紅音さんは僕の行動に全く気にしている素振りがない。代わりにカウンターのような言葉が返ってきた。
「バカにしないで下さい。会場くらい分かりますよ」
流石に心外だった僕はムッとする。
「ごめんごめん言葉足らずだったね。普通に会場行っても人混みが大変だから人の少ない所に行こうと思うの」
紅音さんは"こっち"と僕の手を引く。
突然の事で思考の飛んだ僕はとりあえず草舟のように流されながらそのまま着いて行く。
集合場所からそのまま南下すれば会場に着くのだがそれより東へ進んだ所にある高台を登った。早歩きだったということもあり着く頃には二人とも軽く息が切れていた。帰りも同じ道を通ることに少し億劫になるが考えるのはやめにした。この辺りは高い建物や山などがないためこの場所からは市街地がよく見える。言われていた通りここで見る人は少なく僕たち以外に4、5組といったところであった。
着くと同時に僕はサッと紅音さんの手を離す。
また弄られるだろうなと思って彼女の顔を覗くが意外にも少し頬を赤くしていた。
一応僕も男として見られていたらしい。
「ここ開けてるし、会場からもそこまで離れてないからよく見られるみたい」
紅音さんは照れ隠しのように場所について語り出す。
みたい?
「誰かに教えてもらったんですか?」
「...うん友達にね」
素朴な疑問を投げかけたつもりだったが紅音さんの顔がさらに赤くなる。
「紅音さん大丈夫ですか?」
"大丈夫"と言っているが今日の紅音さんは何だがいつもと様子が違う。さらに聞こうと思ったがちょうど花火が上がり始めたので、聞くのをやめにしてそちらに集中することにした。
「彬人君・・・・」
花火の途中で紅音さんに肩を叩かれ、話しかけられる。しかし花火の音にかき消され聞き取れない。
「え、今なんていいました?」
僕はすぐに聞き返すが紅音さんはやっぱりなんでもないというジェスチャーをした。どうしたのだろうと気になったが彼女は再び花火の方へ顔を向けてしまった。
紅音さんが何を伝えようとしたのかはわからなかったが花火は無事終わり僕は彼女を家まで送ることにした。
帰り道に再び聞いたが紅音さんは答えようとせず、仕方がないのでずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「紅音さんは何で毎日のようにあの河川敷に来るんですか?」
「それは君をいじるのが楽しいからだよ」
僕にとっては花火の言葉よりも疑問に思っていたことだがあっさりと紅音さんは答えた。予想通りの回答が返ってきて納得しながらも、少し複雑な気持ちであった。
”今日は来てくれてありがとう”帰り際に紅音さんはそう言って僕と別れた。