お盆もあけ、夏休みもいよいよ後半と言う時期になった。

僕と紅音さんの時間は相も変わらず続いていた。

お盆は流石に来なくなるだろと思っていたが、紅音さんの親戚もこの近くに住んでいるらしく、普通に来ていた。

これだけ会っていると普通は何かあってもおかしくないが本当に何も無かった。

僕にとってはそれが過ごしやすくて良かったが、紅音さんは何を思っているのかはさっぱり分からない。

そもそもなぜここに来るのかも、僕には分からなかった。

「ずっと気になってたけど彬人君って友達いないの?」

僕が本を読むのに集中出来ていないことに気づいたのか紅音さんが話しかけてきた。

「流石に居ますけど、休みにわざわざ会うほど仲も良くないんですよね。それに前にも言いましたけど1人でいる方が好きなので」
読んでいた小説を閉じて応える。

「へー私が居るのは構わないの?」
紅音さんは悪戯っぽく言う。

「僕が嫌がっても紅音さんは絶対来ますよね?だからもう諦めました。」

「そんなことはないよ、嫌だって言われたら流石に来ないよ」
紅音さんはふふと笑いながら答える。

だが僕は彼女の言葉には懐疑的である。

なぜなら僕の一挙手一投足が紅音さんにとって弄りがいのあるものとなっているからだ。

おかげで彼女と会ってから、毎回のようにいじられている。

それでも僕にとってそれも悪くはなかったけれど。

「もし暇ならさ、今度この川でやる花火大会一緒に見に行かない?」

「え、、」
紅音さんの急な提案に僕は驚く。確かに次の土曜日にこの川で花火大会が行われるが、人混みは嫌いだし、行く相手もいなかったので考えたこともなかった。

「じゃあ、次の土曜日18時にここに来てね、待ってるから」

先輩はいつものように僕の回答を待たずして、それだけ言って帰って行ってしまった。

全く自由な人である。僕はそんな彼女に呆れながらも、少し嬉しかった。