これはかつて少年だった、九路(くろ) (はじめ)の記憶。

 小学生の頃、飼育係だった九路は、学校で鳩小屋の管理をしていた。

 そこである日気付いた。いつも1匹の鳩が別の鳩を突いていることに。

 鳩の世界にもイジメがある事を、九路は知る。


 夢の中で2人目を死に追いやった後も、松雪はコンビニのバイトを辞めずに居た。

 相変わらずきつい仕事をする毎日だったが、ここ最近、松雪は死や生についてよく考えるようになった。

 良いことなのか、悪いことなのか、未来への心配は消え、死んだらどうなるのだろう、何故生きるのだろうかと。

 今日も仕事を終えてまっすぐ家に帰る。地球温暖化か何だか知らないが、九月になってもまだ外は暑い。

 松雪は家に帰り、シャワーを浴びた後は布団に横になって、自分が手を掛けた二人を思い返す。

 人生は生まれ持った物で決まってしまうという言葉。

 顔や身長は遺伝で決まり、変えるには整形手術ぐらいしか方法がない。

 頭も、良い悪いはあるし、それこそ障害を患っていたらどうしようもない。

 何故人間は平等ではないのか、こんなにも差異があるのだろうか。

 そして、理不尽で不平等なのに、何故、皆で一律の教育を受け、社会に出なくてはいけないのだろうか。

 いや、教育も一律ではない。金持ちであれば英才教育を受けることも出来る。

 遺伝的に不平等であるのに、環境も平等ではない。

 世の中は理不尽で出来ている。

 こんな世の中に必死にしがみついて生きて、勝ち組を支える必要はあるのだろうか。

 最初に殺した男、金結の言葉を思い出す。

 松雪は何だか眠れずに、飲み慣れない度数の高い酒を飲む。

 頭も体もカーっと熱くなり、スマートフォンからは癒やされるという音楽を流す。

 だが、何だか全てが虚無だった。




 いつの間にか眠っていてしまった松雪は目を覚ます。

「あっ」

 そんな声が漏れた。身にまとっているのは喪服。目の前には白と黒の空間。

「お待ちしておりました。松雪様」

 生を感じられない美女に声をかけられる。

「さ、サハツキさ……ん」

「三人目の待人の方が現れましたので、お呼び致しました」