松雪は思う、何故小田さんはこんな目に合わなくてはならなかったのだろうと。

 障害を持って産まれたってだけで、小さい頃から差別され、除け者にされ。

 あぁ、なんて世の中は理不尽で不平等なんだろうかと。

 同時に、自分が終わらせてあげなくてはと。

 小田の首に触れた瞬間、恐ろしい力が手に加わった。

「がっぐげっ」

 小田が変な声を出し、バランスを崩して椅子から転げ落ちる。だが、松雪の手が離れることはない。

 みるみる内に小田の顔が真っ赤になる。松雪は見ていられなくなり目を瞑って一刻も早くこの時が終わるように願っていた。

 そこからは、短いような長いような時が経つ。ふっと手から力が抜ける。そこには人間だった何かが横たわっていた。

「松雪様、お疲れ様でした」

 ビクッとして後ろを振り返る。そこにはサハツキが立っていた。

 松雪ははぁはぁと荒い息をして彼女を見つめる。そして、意識が遠のいていった。



 目を覚ますと、自分の部屋で横たわっていた。

「くそっ!!」

 最初に出た言葉はそれだった。これは夢なのか、現実なのか、どちらにしろ胸糞悪い話だった。

 今日は休みの日だ。何も動く気力が沸かない。

 しばらくの間、松雪は布団の上で力なくボーっとしていた。






 あぁ、やっと死ねた。死にたいって思っていたけど、同時に死が怖かった。

 やっとこれで解放される。何もかもから。