②冒頭部分のプロット
第1話
ミルザは最弱のハズレ職【アイテム使い】にのみ適正があった少年。
序盤の能力成長が最低な大器晩成型で、誰一人として大成した者のいないと言われる。
彼の幸運は、チート級の固有スキル『無限収納』を持っていた事。
そんなミルザに目を付けたA級冒険者一行は、好条件を提示してパーティーに引き入れる。
ところが彼らは荷物持ちとしてだけミルザを扱い、散々連れ回した上に「活躍してないだろ」と約束の分け前もくれず、挙げ句の果てに最強クラスの竜に遭遇すると、ミルザを置き去りにして一目散に逃げ出してしまう。
一人残されたミルザは神聖な雰囲気漂う白き竜の美しさにただ見惚れた。
竜はミルザをじっと見つめる。
暫しの沈黙の後に彼の能力を見抜いた竜は、ミルザに身の上話を始めた。
竜の話しでは、天界で人の姿で過ごしていた頃、熱烈に神々から求愛された事がきっかけで、嫉妬した女神たちに巨竜のまま姿を変えられない状態で、このダンジョンに封じられてしまったと言う。
巨体で身動きも取れずにいたが、地上に出れば人の姿に戻れるらしい。
気の毒に思うミルザに、彼のスキル無限収納で外に連れ出して欲しいと竜は願う。
しかも持っている宝物は全てあげると。
ミルザは二つ返事で引き受けると、竜の加護がまばゆい光となってミルザを包み込む。
モンスター達は近寄ることすら叶わず、出口へと導く光球によって無事にミルザはダンジョンを脱出できた。
吹き抜ける風が気持ち良い陽射しのもとで、長い銀髪の絶世の美女へと姿を変えた竜はミルザに丁寧にお辞儀をする。
彼女はクレリスと名乗り、ミルザに名前を聞くとお友達になって下さいとその手を差し出す。
あまりに魅力的な彼女の笑顔にハートを射貫かれたミルザは、照れながらお願いしますと答えた。
第2話
冒険者ギルドに戻ってみると、ミルザを見つめる人たちの顔が驚きに満ちている。
なんと逃げ出したA級冒険者たちがミルザの死亡を報告をしていたのだ。
クレリスが彼らを指さして言う。
「ミルザさんを置き去りにして逃げ出すのを、この目でハッキリ見ましたよ」と。
ギルドの全員から一斉に白い目を向けられ、罵声を浴びせられるA級冒険者一行。
彼らにパーティーを抜けると言い放ったミルザは、クレリスと共にギルドを後にする。
クレリスは過去を思い返すように、人と様々な種族が共存していた頃が楽しかったと微笑を浮かべた。
ミルザも彼らを迫害する今のやり方には反対で意気投合する二人。
話が弾む中、クレリスの提案でエルフ領やドワーフ領、獣人領に隣接している辺境の村に向かう事になる。
強くなりたいと願うミルザの気持ちを察したクレリスは、渡した宝物の使い方を丁寧に教えた。
巨人の指輪はミルザに力を与え身体を強靱にし、武神の首飾りはミルザを武器と格闘の達人に変えると、アイテム使いの能力でそれらの神器は本来以上の威力を発揮する。
道中のダンジョンでミルザは、クレリスから効率的に鍛えられていく。
手当たり次第にダンジョンを攻略し、通りかかった魔物も残さず狩って行くと、村に着く頃にはミルザは見た目はそのままに別人のような強者へと変わっていた。
第3話
色んな種族が手を取り合う辺境の村の光景は、ミルザにとっては夢のようであり、クレリスには懐かしい光景だった。
人と他種族たちの公益場として古くから機能していた村には活気があるが、彼らに二人は訝しげな目を向けられてしまう。
クレリスが温かで優しい光を発すると、彼らの心にテレパシーのような感覚で彼女の言葉が響く。
ーーーただいま。私の愛した方々の子孫の皆さん。
村の住人たちが一斉にクレリスに向かって跪いた。彼女は彼らにとって守り神的存在だったのだ。
普通にして下さいと畏まるクレリス。隣にいたミルザも村に受け入れられ、その日は守り神を祝う宴となる。
翌日から村の小さな冒険者ギルドに通い始めたミルザは、多くのクエストを難なくこなし、歴代最速のペースでFからAランク冒険者へと昇格!
武神の首飾りで剣を操るミルザはまるで名のある剣聖のようで、ギルドの受付嬢はジョブやランクが表示される冒険者プレートを見て、「『アイテム使い』って強いんですね」と感激。他の受付嬢たちも彼の元に近寄って来る。
人生で始めて女の子たちにチヤホヤされるミルザは内心とても嬉しかったが、一目惚れしていたクレリスに違うんだよと誤解を解くのに必死になる。
少しだけクスクスっと笑って、からかうクレリス。
この村のギルドが変わっていたのは近隣のギルドと一切繋がりがなく、中立都市にあるギルド本部としか交流を行っていない事だった。
三つの種族の領地と接する位置にある為、本部同様にこの村も中立が求めらているらしい。
他のギルドでは人以外の種族を奴隷として国や貴族に売る非道な行為も行われていた。
帝国時代から存在するギルド本部は、この村のように人と彼らの共生を望んでいる。
ミルザとクレリスは良き時代の在り方を取り戻すべく、この辺境の村から改革を始めて行く事になる。