雪下の花嫁①~再会した花嫁は恋に買われる~

「……ねぇ、いすず」
「どうなさいましたか?」
「和史さんは……その、気が利かないの?」

 小首をかしげてそう問いかければ、今度はいすずがぽかんとした。

 しかし、すぐに大きく頷く。

「……まぁ、気が利かないというのは語弊がありますか。あのお方は、とにかく他人に興味がないのです」
「興味がない」
「はい。なので、他のお人を気に掛けることもなさいません。あのお方の興味は、全てお仕事に注がれているのです」

 いすずの話し方からして、それは嘘ではなさそうだ。

 だが、他人に興味のない人が、姫子を拾うだろうか?

(幼馴染だから、都合がよさそうだったから。……それだけ、かしら?)

 なんだかもっと違う理由があるような気もしてしまう。

 そう思って俯く姫子に、いすずは声をかけてくることはなかった。

 きっと、彼女は彼女で姫子との距離の詰め方を考えているのだろう。姫子がそう思っているのと同じか、それ以上に。女中であるいすずは考えているはずだ。

「……でも、和史さんはお優しいわ」

 それは、いすずに伝えた言葉じゃない。自分自身に言い聞かせるために呟いた言葉だった。