雪下の花嫁①~再会した花嫁は恋に買われる~

 ……その感情の意味は、ちっとも分からない。

 わなわなと震える唇。手も震えている。

 頭の中に「どうして」という感情が何度も何度も浮かんで、消えてくれなくて。

 姫子はぎゅっと目を瞑った。

「……あなたさまは、私のことを好いてなどいないというのに」

 自分でも驚くほどに冷たい声だった。和史を見つめることなく、姫子はそう告げる。

 和史は少しだけ間を置いて、口を開いた。

「どうして、ダメなんだ」
「ど、うして、とは……」
「お前は金で買われたとはいえ、俺の妻になった。これくらい、したところで問題ないだろうに」

 頭の中が真っ白になる。

 確かに、和史以外がこんなことをして、そんな言葉を述べたのならば。まだ理解できただろう。

 なのに、自分に口づけ、そう吐き捨てた相手がほかでもない和史だから。……姫子は、苦しかった。

 涙が頬を伝うのがわかった。悔しさとか、苦しさとか。いろいろな負の感情がめちゃくちゃに混ざり合って、姫子の心をかき乱す。

「……どうして、泣く」

 冷たく問いかけられた。いや、問いかけじゃない。吐き捨てられたような言葉だ。