じっと俯いていれば、もう片方の手で強引に上を向かされた。
結局和史から視線を逸らせなくて、姫子は彼と見つめ合う形になる。まるで、時が止まったかのような感覚。
「……か、ずし、さん」
唇が和史のことを呼ぶ。瞬間、彼の顔が近づいてきて――姫子の唇に、なにかが触れた。
驚いて目を見開く。逃げようとする。けれど、上手く行かない。片手を和史に掴まれている所為で、逃げられなかった。
(……これは、口づけ)
どうして、彼がこんなことをするのだろうか……?
姫子の頭が混乱する。
しばらくして、和史の顔が離れていく。視界に映る恐ろしいほどに整った美しい顔。
……自然と息を呑んで、姫子は唇を震わせる。
「ど、うして……」
口からそんな言葉が零れる。和史はなにも言わない。
「どうして、こんなことをなさるのですか……」
自分の声が明らかに震えている。胸の奥底からこみあげてくるのは、悔しさにも似た感情だった。
結局和史から視線を逸らせなくて、姫子は彼と見つめ合う形になる。まるで、時が止まったかのような感覚。
「……か、ずし、さん」
唇が和史のことを呼ぶ。瞬間、彼の顔が近づいてきて――姫子の唇に、なにかが触れた。
驚いて目を見開く。逃げようとする。けれど、上手く行かない。片手を和史に掴まれている所為で、逃げられなかった。
(……これは、口づけ)
どうして、彼がこんなことをするのだろうか……?
姫子の頭が混乱する。
しばらくして、和史の顔が離れていく。視界に映る恐ろしいほどに整った美しい顔。
……自然と息を呑んで、姫子は唇を震わせる。
「ど、うして……」
口からそんな言葉が零れる。和史はなにも言わない。
「どうして、こんなことをなさるのですか……」
自分の声が明らかに震えている。胸の奥底からこみあげてくるのは、悔しさにも似た感情だった。

