そう思いつつ、そっと花弁に触れる。自然と頬を緩めていれば、扉が開いた。そちらに視線を向けると、そこには和史がいる。……彼は、姫子をじっと見つめて固まっていた。
「……和史さん?」
きょとんとしつつ、彼の名前を呼ぶ。彼はハッとして、姫子のほうに近づいてきた。
そして、姫子のすぐ隣で立ち止まる。
「……お前は、変わらないな」
和史が小さく呟いた言葉。その意味が、生憎姫子にはちっともわからない。
だって、姫子は変わってしまった。あの頃の無邪気な姫子は、もう居ないのだから……。
「いえ。……変わって、しまいました。あの頃のような無邪気さは、今の私にはありませんから……」
世界が善意で出来ていると信じていて、誰もが優しいと信じていた。まさに、籠の中の鳥だった。
「もう、あの頃のように無邪気に人を信じることは出来ないのです」
花弁から手を離す。口から零れた言葉に、和史はどういう反応をするのだろうか。不安を抱きつつ、ちらりと彼を見つめた。
彼は眉間にしわを寄せていた。唇を噛んで、まるでなにかに耐えているかのような表情だ。
「なんて、愚痴を言ってしまって、申し訳ございません。今後は、このようなことはないようにしますので……」
愚痴なんて聞いていて気持ちのいいものではない。それくらい、姫子にだってわかる。
彼に向かって深々と頭を下げる。彼はなにも言わない。
「……和史さん?」
きょとんとしつつ、彼の名前を呼ぶ。彼はハッとして、姫子のほうに近づいてきた。
そして、姫子のすぐ隣で立ち止まる。
「……お前は、変わらないな」
和史が小さく呟いた言葉。その意味が、生憎姫子にはちっともわからない。
だって、姫子は変わってしまった。あの頃の無邪気な姫子は、もう居ないのだから……。
「いえ。……変わって、しまいました。あの頃のような無邪気さは、今の私にはありませんから……」
世界が善意で出来ていると信じていて、誰もが優しいと信じていた。まさに、籠の中の鳥だった。
「もう、あの頃のように無邪気に人を信じることは出来ないのです」
花弁から手を離す。口から零れた言葉に、和史はどういう反応をするのだろうか。不安を抱きつつ、ちらりと彼を見つめた。
彼は眉間にしわを寄せていた。唇を噛んで、まるでなにかに耐えているかのような表情だ。
「なんて、愚痴を言ってしまって、申し訳ございません。今後は、このようなことはないようにしますので……」
愚痴なんて聞いていて気持ちのいいものではない。それくらい、姫子にだってわかる。
彼に向かって深々と頭を下げる。彼はなにも言わない。

