「部屋の準備は今からさせる。……お前は、ここで待っていろ」
そう言った和史が、立ち上がって姫子の隣を通り抜けようとする。
そのとき、姫子の鼻腔にふわっと香りが届く。懐かしい、和史の香りだと思った。
「……変わっていないことも、あるんだ」
ぽつりとそう言葉を零した。和史が扉を開けて部屋から出ていく。
ここで待っていろと言われた以上、勝手な行動は慎むべきだろう。その一心で、姫子はここで和史が戻ってくるのを待つことにした。
が、さすがに退屈だったので部屋を観察してみることにする。
和洋折衷の美しい室内。ここに置いてある骨とう品などは、きっと姫子には想像もできない値段のものなのだろう。
一日一日を生きるのに精いっぱいの今の姫子には、骨とう品など買う余裕もない。
そっと棚に近づいてみる。埃はない。掃除が行き届いている証だ。
棚には骨とう品のほかに、花が飾ってあった。この花は、一体なんなのだろうか? 真っ赤な花弁が美しい。
(……昔は、お花をめでることも好きだったわね)
いつしか、花をめでる余裕もなくなって。今では花の種類なんて頭の片隅にもない。
そう言った和史が、立ち上がって姫子の隣を通り抜けようとする。
そのとき、姫子の鼻腔にふわっと香りが届く。懐かしい、和史の香りだと思った。
「……変わっていないことも、あるんだ」
ぽつりとそう言葉を零した。和史が扉を開けて部屋から出ていく。
ここで待っていろと言われた以上、勝手な行動は慎むべきだろう。その一心で、姫子はここで和史が戻ってくるのを待つことにした。
が、さすがに退屈だったので部屋を観察してみることにする。
和洋折衷の美しい室内。ここに置いてある骨とう品などは、きっと姫子には想像もできない値段のものなのだろう。
一日一日を生きるのに精いっぱいの今の姫子には、骨とう品など買う余裕もない。
そっと棚に近づいてみる。埃はない。掃除が行き届いている証だ。
棚には骨とう品のほかに、花が飾ってあった。この花は、一体なんなのだろうか? 真っ赤な花弁が美しい。
(……昔は、お花をめでることも好きだったわね)
いつしか、花をめでる余裕もなくなって。今では花の種類なんて頭の片隅にもない。

