買われた。それは、まだ納得できる。
姫子は一万円分の働きをせねばならない。だから、それはまだいい。
ただ、問題は。
(妻として……)
どうして和史は、自らを妻にしようと思ったのかということだ。
だって、そうじゃないか。彼は名家月橋家の跡継ぎなのだ。女性には困っていないだろうし、彼の妻になりたいと願う女性だってきっと多い。
なにも、姫子のような訳ありな女性を選ばなくてもいいだろうに……。
「で、ですが、和史さん――」
「――文句が、あるのか?」
和史が姫子の言葉を聞き終えるよりも先に、自らの問いかけを口にした。
文句なんてない。むしろ、和史の妻になれるなんて。願ったり叶ったりだろう。
「俺が実家に帰らないのは、両親が鬱陶しいからだ。……そろそろ妻を迎えろと、見合いを勧められてかなわない」
「……は、はぁ」
「だが、妻を迎えるなんて絶対にごめんだ。俺は人を信頼しない」
吐き捨てられた言葉に、姫子の心が痛む。
姫子だって、和史と会っていない間にいろいろとあった。心は擦れたし、何度も嫌になって死のうと思ったことだってある。
でも、人を信頼しないと思ったことはない。……もちろん、相手にによるところもあるが。
ぎゅっと手を握れば、和史がちらりと姫子に視線を向ける。彼の目が凍てついたように冷たい。醸し出す視線も、絶対零度だと思った。
姫子は一万円分の働きをせねばならない。だから、それはまだいい。
ただ、問題は。
(妻として……)
どうして和史は、自らを妻にしようと思ったのかということだ。
だって、そうじゃないか。彼は名家月橋家の跡継ぎなのだ。女性には困っていないだろうし、彼の妻になりたいと願う女性だってきっと多い。
なにも、姫子のような訳ありな女性を選ばなくてもいいだろうに……。
「で、ですが、和史さん――」
「――文句が、あるのか?」
和史が姫子の言葉を聞き終えるよりも先に、自らの問いかけを口にした。
文句なんてない。むしろ、和史の妻になれるなんて。願ったり叶ったりだろう。
「俺が実家に帰らないのは、両親が鬱陶しいからだ。……そろそろ妻を迎えろと、見合いを勧められてかなわない」
「……は、はぁ」
「だが、妻を迎えるなんて絶対にごめんだ。俺は人を信頼しない」
吐き捨てられた言葉に、姫子の心が痛む。
姫子だって、和史と会っていない間にいろいろとあった。心は擦れたし、何度も嫌になって死のうと思ったことだってある。
でも、人を信頼しないと思ったことはない。……もちろん、相手にによるところもあるが。
ぎゅっと手を握れば、和史がちらりと姫子に視線を向ける。彼の目が凍てついたように冷たい。醸し出す視線も、絶対零度だと思った。

