「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」
幻精姫遊のリーダーが顔を真っ赤にして金髪を振り乱しながら駆けてくる。ゴールドのビキニアーマーがキラキラと輝いた。
「あんた達何なのよ? どういうこと?」
この街で特別扱いされるとしたらアラフォーパーティなどではなく、自分たちだろうとでも思っているのだろう。
相変わらず傲慢な彼女の若さを少し羨ましく思いながら、ソリスは答えた。
「あなた、殺された事……ある?」
「はぁ……? ある訳ないでしょ!」
「私は何度も殺されたの……。身体を破壊される激痛が脳髄をも破壊していくの……。それはもう二度と味わいたくない最悪な体験よ? でもおかげでこの世界の真実に目覚めたのよ」
ソリスは青空に手を伸ばし、晴れやかな顔で伝えた。
「はぁっ!? 何が真実よ! ショボいおばさんのくせに!」
ソリスの脳内でカチッという何かのスイッチが入った――――。
直後、レベル135のソリスはひらりと風にように宙を舞い、大剣を朝日にギラリと光らせながらリーダーに迫る。
ひぃっ!
そのすさまじい殺気に気おされ、リーダーは剣を抜くこともできなかった。
刀身を首に当てながら、ソリスは鋭い目を光らせ、リーダーの瞳をのぞきこむ。
「なんて……言ったの? もう一回言ってくれる?」
ひっ! ひぃぃぃぃぃ! ごべんなさいぃぃぃ!!
ソリスの瞳に浮かぶ殺意に、リーダーは言葉を失い、ジョロジョロと失禁してしまう。
「あちゃー……。そうだ、コイツはそうだったんだよ……」
ソリスは慌てて飛沫を避けながら眉をひそめた。
◇
「一回殺してやれば良かったんだよ。きゃははは!」
乗船してきたソリスに、シアンは楽しそうに笑った。
「こ、殺すのはどうかと……」
ナチュラルに殺せという師匠に、ドン引きしながらソリスは苦笑する。
「お邪魔しまーす」「しまーす……」
フィリアとイヴィットがキョロキョロしながら恐る恐る乗船してきた。
「おーう、いらっしゃい! これから東京を遊覧飛行するから楽しんでいって」
「と、東京……?」
フィリアはイヴィットとは不安げに顔を見合わせた。
◇
キィィィィィィィン……。
青く鋭い輝きを放ちながらエンジンが吹け上がって行く。
「それ行けー!」
シアンは一気に操縦桿を引き上げる。
ゴォォォォォ!
豪快な音を響かせながら、シャトルは一気に朝の爽やかな青空へと高度を上げて行く。
「うぉぉぉ!」「飛んだぞ!」「め、女神様じゃ! 女神様の使いじゃーー!」
集まっていた多くのやじうまは、未来から来たかのような乗り物の派手な離陸に圧倒され、歓声を上げる。ジェット噴射の猛烈な暴風に包まれながらも、彼らは腕で顔を覆い、目を見開いて天高く舞い上がるシャトルを呆然と見つめていた。
「おぉぉぉぉ……」「うぁぁぁぁ……」
フィリアとイヴィットは、どんどんと小さくなって行く街の風景に驚嘆の声を上げる。
「まるでオモチャみたいでゴザルよ!」「すっ、すごい……」
まるで子供のようにはしゃぐ二人を優しい目で見つめていたソリスだったが、これを一体どうやって説明したものかと渋い顔で首をひねる。まさか世界は全部デジタルデータだった、なんて言って納得してもらえるとも思えなかった。
「ハーイ! それじゃひとっ飛び行くよ! 衝撃に備えて!」
シアンは三人を見回すとニヤッと笑い、操縦桿を一気に引き倒した。
ドン!
ものすごいGが一行の身体をググっとシートへと押し付ける。
あっという間に音速を超えたシャトルは、衝撃波を放ちながらさらに加速して行く。
「ひぃぃぃ……」「うほぉぉぉ……」
強烈な加速度にフィリアもイヴィットも目を白黒させている。
ソリスもなかなか慣れないGに渋い顔で口を結んだ。
「コンディショングリーン! 転移まで十、九、八……」
シアンは画面をパシパシ叩きながら秒読みを始めた。
ゴゴゴと、超音速の機体は鈍いノイズを発しながら徐々に赤く発光し始める。
「それ行けー! きゃははは!」
シアンは青い目をキラリと輝かせ、パシッと画面を叩いた。
刹那、全ての光と音が消え去り、漆黒の静寂に包まれる――――。
◇
えっ……?
暗闇の中、ふわふわと宙を漂う身体をソリスは持て余す。いわゆる次元のはざまという奴だろうか? 星を抜けて日本へといく間の境界……。しかし、声をかけても誰の返事もない。この漆黒の闇と静寂の中、自分だけが無重力の世界を漂っている。
あまりにも静かになりすぎて、耳元でキーンという耳鳴りが聞こえ始めた。ソリスはその異常な暗闇と静けさの中孤独感に囚われ、不安が胸の中でじわじわと広がっていく。
やがて闇の中に微細な紫色の光の微粒子が舞い始めたのに気がついた。
え……?
徐々に輝きを増し、数も増えていく微粒子たち――――。
クスクスクス……。
どこからか少女の笑い声が聞こえてくる。ソリスはその声に聞き覚えがあった。ゴスロリ少女だ。若返りの呪いをかけた忌々しいダンジョンボスを思い出し、ソリスは険しい顔で声の方向を探った。自分が次元のはざまに入ったのをいいことに、ちょっかいをかけてきたのかもしれない。
幻精姫遊のリーダーが顔を真っ赤にして金髪を振り乱しながら駆けてくる。ゴールドのビキニアーマーがキラキラと輝いた。
「あんた達何なのよ? どういうこと?」
この街で特別扱いされるとしたらアラフォーパーティなどではなく、自分たちだろうとでも思っているのだろう。
相変わらず傲慢な彼女の若さを少し羨ましく思いながら、ソリスは答えた。
「あなた、殺された事……ある?」
「はぁ……? ある訳ないでしょ!」
「私は何度も殺されたの……。身体を破壊される激痛が脳髄をも破壊していくの……。それはもう二度と味わいたくない最悪な体験よ? でもおかげでこの世界の真実に目覚めたのよ」
ソリスは青空に手を伸ばし、晴れやかな顔で伝えた。
「はぁっ!? 何が真実よ! ショボいおばさんのくせに!」
ソリスの脳内でカチッという何かのスイッチが入った――――。
直後、レベル135のソリスはひらりと風にように宙を舞い、大剣を朝日にギラリと光らせながらリーダーに迫る。
ひぃっ!
そのすさまじい殺気に気おされ、リーダーは剣を抜くこともできなかった。
刀身を首に当てながら、ソリスは鋭い目を光らせ、リーダーの瞳をのぞきこむ。
「なんて……言ったの? もう一回言ってくれる?」
ひっ! ひぃぃぃぃぃ! ごべんなさいぃぃぃ!!
ソリスの瞳に浮かぶ殺意に、リーダーは言葉を失い、ジョロジョロと失禁してしまう。
「あちゃー……。そうだ、コイツはそうだったんだよ……」
ソリスは慌てて飛沫を避けながら眉をひそめた。
◇
「一回殺してやれば良かったんだよ。きゃははは!」
乗船してきたソリスに、シアンは楽しそうに笑った。
「こ、殺すのはどうかと……」
ナチュラルに殺せという師匠に、ドン引きしながらソリスは苦笑する。
「お邪魔しまーす」「しまーす……」
フィリアとイヴィットがキョロキョロしながら恐る恐る乗船してきた。
「おーう、いらっしゃい! これから東京を遊覧飛行するから楽しんでいって」
「と、東京……?」
フィリアはイヴィットとは不安げに顔を見合わせた。
◇
キィィィィィィィン……。
青く鋭い輝きを放ちながらエンジンが吹け上がって行く。
「それ行けー!」
シアンは一気に操縦桿を引き上げる。
ゴォォォォォ!
豪快な音を響かせながら、シャトルは一気に朝の爽やかな青空へと高度を上げて行く。
「うぉぉぉ!」「飛んだぞ!」「め、女神様じゃ! 女神様の使いじゃーー!」
集まっていた多くのやじうまは、未来から来たかのような乗り物の派手な離陸に圧倒され、歓声を上げる。ジェット噴射の猛烈な暴風に包まれながらも、彼らは腕で顔を覆い、目を見開いて天高く舞い上がるシャトルを呆然と見つめていた。
「おぉぉぉぉ……」「うぁぁぁぁ……」
フィリアとイヴィットは、どんどんと小さくなって行く街の風景に驚嘆の声を上げる。
「まるでオモチャみたいでゴザルよ!」「すっ、すごい……」
まるで子供のようにはしゃぐ二人を優しい目で見つめていたソリスだったが、これを一体どうやって説明したものかと渋い顔で首をひねる。まさか世界は全部デジタルデータだった、なんて言って納得してもらえるとも思えなかった。
「ハーイ! それじゃひとっ飛び行くよ! 衝撃に備えて!」
シアンは三人を見回すとニヤッと笑い、操縦桿を一気に引き倒した。
ドン!
ものすごいGが一行の身体をググっとシートへと押し付ける。
あっという間に音速を超えたシャトルは、衝撃波を放ちながらさらに加速して行く。
「ひぃぃぃ……」「うほぉぉぉ……」
強烈な加速度にフィリアもイヴィットも目を白黒させている。
ソリスもなかなか慣れないGに渋い顔で口を結んだ。
「コンディショングリーン! 転移まで十、九、八……」
シアンは画面をパシパシ叩きながら秒読みを始めた。
ゴゴゴと、超音速の機体は鈍いノイズを発しながら徐々に赤く発光し始める。
「それ行けー! きゃははは!」
シアンは青い目をキラリと輝かせ、パシッと画面を叩いた。
刹那、全ての光と音が消え去り、漆黒の静寂に包まれる――――。
◇
えっ……?
暗闇の中、ふわふわと宙を漂う身体をソリスは持て余す。いわゆる次元のはざまという奴だろうか? 星を抜けて日本へといく間の境界……。しかし、声をかけても誰の返事もない。この漆黒の闇と静寂の中、自分だけが無重力の世界を漂っている。
あまりにも静かになりすぎて、耳元でキーンという耳鳴りが聞こえ始めた。ソリスはその異常な暗闇と静けさの中孤独感に囚われ、不安が胸の中でじわじわと広がっていく。
やがて闇の中に微細な紫色の光の微粒子が舞い始めたのに気がついた。
え……?
徐々に輝きを増し、数も増えていく微粒子たち――――。
クスクスクス……。
どこからか少女の笑い声が聞こえてくる。ソリスはその声に聞き覚えがあった。ゴスロリ少女だ。若返りの呪いをかけた忌々しいダンジョンボスを思い出し、ソリスは険しい顔で声の方向を探った。自分が次元のはざまに入ったのをいいことに、ちょっかいをかけてきたのかもしれない。