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「…もう二十年、か」



いつもの場所に腰掛けて本を開きながら、ふとあの夏を思い出していた。



今年も陽葵のいない夏がやってきた。


毎年この時期は、どんなに忙しくてもこの場所で本を読む日課は変えずに生きてきた。


だってそうすれば、いつかきっとまた君と出会うことができると信じているから…。



「ねえ、そこのキミ。なに読んでるの？」



後ろから聞こえてきた懐かしいそのセリフに、勢いよく振り向く。



「小説、だよねそれ？なんて題名？」


「…“あの夏がキミを思い出させる”」


「へぇ、面白そう。私にも見せてよ」



髪をなびかせている彼女が、あの夏と変わらない笑顔の花を咲かせていた。



僕たちの明日はこの先もずっと続いていく。


眩しいこの青空の下で。