せっかく両想いだというのに、僕たちは素直に喜べなかった。


お互い泣きそうになっているのは、好き同士だけど付き合うことはできないという暗黙の了解があるからだ。



「…やっぱり、海斗くんの気持ち聞けてよかったかも。今日が間違いなく人生で一番大切な日になったから」



引き寄せられるようにして、陽葵の頬に手を当てて顔を近づけていた。


身を任せるように静かに目を閉じた陽葵の唇に自分の唇をそっと重ねる。



「…これも、秘密だね」



唇を離した陽葵が照れくさそうに頬をほんのり赤くして笑った。



「そういえば、海斗くんの誕生日はいつ?」


「僕?9月20日だよ」


「へぇ、もうすぐだね!なんとなく夏生まれだと思ってたけど、秋の始まりかぁ。なんだか海斗くんらしいかも」



家までの道を先導して歩きながらふと振り返ってきた陽葵に「なんだそれ」と苦笑いを返す。



「その時は私に一番にお祝いさせてね!」



そう言って笑った陽葵の言葉は、実現されることはなかった。