話せば楽になることだってある。陽葵が抱えているものを僕にも抱えさせてほしいんだ。


僕は陽葵が大切で…好きだから。



「寝たら今日感じたこともしたことも、全部次の日には忘れちゃうから。それなら明日が来なければいいのにって毎日思うの…。みんなは当たり前に覚えていられるのに、私にはそれができないから。忘れちゃうことが当たり前だから。忘れるたびに、もうすぐ私は死ぬんだって実感して…怖いの」



涙声で震えている陽葵をぎゅっと強く抱きしめる。



この小さな体で陽葵はずっと大きな悩みを抱えて生きてきた。


僕が想像もできないくらい残酷で悲しい運命を一人で抱えてきたんだ。



「陽葵は明日が来ることが怖いかもしれないけど、それでも僕は陽葵と明日を過ごしたい。たしかにこのままでいたいとも思うよ。この時間がずっと続けばいいって。…だけど、陽葵の未来も諦めないでほしいんだ」



陽葵がハッとしたように顔を上げた。



「僕は陽葵のそばにいるよ。ずっとね。だから、諦めないで。一緒に生きようよ」