火だけを見つめながらじっと答えを待っている陽葵の儚い横顔を眺めながら、ゆっくりと口を開く。



「…楽しいよ」


「…本当?嘘はダメだよ」


「嘘じゃないよ。逆に陽葵は僕といて、楽しい?」



陽葵はまさか質問返しをされると思っていなかったのか、少し驚いた顔をしてから小さく頷いてくれた。



「楽しいよ。海斗くんと出会う前までは、人生に希望なんてなかったの。大袈裟かもしれないけど、本当だよ?周りは私を腫れ物のように扱うから、明日の保証もなくて一緒にいても覚えていられない私にみんなは離れていっちゃうから。…だから、生きててもなんにも楽しくなかった。だけど海斗くんは違った。ここにいていいって私を受け入れてくれた。…きっとその時の私はすごく嬉しかったんだよ。わからないけど、それがわかるから。私は毎日キミと初めましてを繰り返して、毎日楽しいって思ってるんだよ」



ふわっと少し涼しい海風にさらわれて、陽葵の髪の毛が踊っていた。


儚くて今にも消えてしまいそうな、そんな線香花火みたいな優しい笑顔がとても綺麗だと思った。



「最後の一本だね」