元から海も一人でいることも好きだった僕にとって、この場所は唯一の居場所であり最高なオアシスとなった。


最近の日課は、ちょうど日陰になっているこの階段に腰掛けて本を読むことだ。



「ねえ、そこのキミ。なに読んでるの?」



いつも通り目の前の小説だけに集中していると、突然横から女の子がぬっと顔を覗かせてきた。



「うわぁ!?び、びっくりした…」


「あはは、ごめんごめん。随分といい場所で本なんて読んでるから、つい気になっちゃって」



女の子は片手で頬杖をつきながら、にっと眩しく笑った。


ブラウンの肩まである髪の毛が海風にさらわれてふわっと揺れ、その拍子にシャンプーの甘い香りが香ってきた。



「で?なに読んでるの?」


「別に…。普通の小説ですけど…」