彼女と出会ったのは、照りつける夏の日差しが眩しい青空の下だった–––。



「あっつ…」



自転車で漕ぎ慣れた道を進みながら、額からこぼれ落ちる汗をTシャツの袖で拭う。



夏休み初日。茹だるような暑さに、クーラーの効いた部屋にいればよかったと少し後悔する。


…が、しばらくして見えてきた海に、そんな気持ちはあっという間にどこかへ飛び去ってしまう。



「今日も綺麗だなぁ…」



海の近くの日陰になっている階段脇に自転車を停める。


そして、この街で唯一誇れるどこまでも続く透き通るような海に、今日も感嘆の声を漏らす。



僕がこのベストポジションを見つけたのは、つい一ヶ月くらい前のこと。


学校帰りにたまたまいつもと違う場所から帰っていた時に、海を一望できてしかも誰もいない僕だけのこの場所を見つけたのだ。