お昼ご飯を食べ、俺は自転車でモールに向かった。アスファルトが、じりじりと焼き付くように光っていた。
相変わらず、河川敷には短い背丈の草たちが、太陽の光をいっぱいに吸収している。
「やっほー蒼真」
「陽太、待たせた?ごめん」
「行こうぜ」
あっつ、とつぶやきながら入ったモールは、エアコンがガンガンにきいていて、少し寒いほどだった。
「俺、ちょっとシュークリーム買ってきていい?」
陽太がシュークリームのお店を指差して言う。俺も食べたくなってきた。
「うん。俺も買おうかな。なんかフルーツ系の味ある?」
「期間限定で、夏はりんご飴味出てる」
「え、食べたい」
陽太は慣れたようにシュークリームを一瞬で注文し、俺は間違えないように、丁寧にしっかり注文した。
「ここに座って食べよっか」
ぺり、と紙をめくると、薄い飴でコーティングされた可愛らしいシュークリームが出てきた。
いただきます、と一口かじると、パリっと表面の飴に亀裂が入り、ふわふわのシュークリームが、ふんわりと口の中で溶けた。
それから、クリームに入ったシャキシャキのりんごが、りんご飴を見事に連想させた。
「…え、すごい。陽太、めっちゃ美味しいよ、これ!」
「だろ?俺もう五回食べてるから、言われなくてもわかんだよ」
「美味しい、ほんと美味しい~…」
りんご飴、「刺すより喰めば」にも出てきてたな。あれ、何かのキーアイテムなのかな。
…そういえば、俺が一番最初にりんご飴を食べたのって、きこさんが夏祭りでくれたからだった。
小さい頃、俺ときこさんと俺のお母さんの三人で、夏祭りに行った。
そこで初めて、きこさんに「美味しいよ」と言われて、りんご飴を食べた。
子どもながらに、俺は美味しすぎて、夢中で食べていたっけ。
「蒼真?」
そんなことを思い出していると、陽太に話しかけられ、現実に引き戻された。
「どした?」
「あぁ、なんか昔のこと思い出してた」
…というか。
「俺、陽太に伝えたいことがあって」
「え、何?」
俺は今日、陽太にきこさんのことを言おうと思っていたのだ。
「俺がいつも行ってる本屋でね、何年かぶりに、幼馴染と再会したんだよ!」
ぽかんとした表情の陽太から発せられた言葉は、自分の想像をはるかに裏切った。
「…は?」
「…え?」
少し沈黙の間が空いてから、陽太がその空気をさいた。
「いやいや、え?それが俺に伝えたいこと?」
「うん、そうだけど…」
くはっ、と大きく口を開け、陽太が笑い始めた。俺は意味が分からず、陽太に状況を説明すると、ますます笑われてしまった。
「俺そんな面白いこと言ったかな?」
「いや、面白いっていうか、特に重大な事じゃなくてよかったって思って。その話、また後で聞かせてよ。楽しみだわぁ」
俺は応援してるから~、と言う陽太に違和感を覚えつつも、何の弁当を買って帰ろうかを考えてしまっている自分に恥ずかしくなって、陽太の発言はどうでもよくなっていた。
相変わらず、河川敷には短い背丈の草たちが、太陽の光をいっぱいに吸収している。
「やっほー蒼真」
「陽太、待たせた?ごめん」
「行こうぜ」
あっつ、とつぶやきながら入ったモールは、エアコンがガンガンにきいていて、少し寒いほどだった。
「俺、ちょっとシュークリーム買ってきていい?」
陽太がシュークリームのお店を指差して言う。俺も食べたくなってきた。
「うん。俺も買おうかな。なんかフルーツ系の味ある?」
「期間限定で、夏はりんご飴味出てる」
「え、食べたい」
陽太は慣れたようにシュークリームを一瞬で注文し、俺は間違えないように、丁寧にしっかり注文した。
「ここに座って食べよっか」
ぺり、と紙をめくると、薄い飴でコーティングされた可愛らしいシュークリームが出てきた。
いただきます、と一口かじると、パリっと表面の飴に亀裂が入り、ふわふわのシュークリームが、ふんわりと口の中で溶けた。
それから、クリームに入ったシャキシャキのりんごが、りんご飴を見事に連想させた。
「…え、すごい。陽太、めっちゃ美味しいよ、これ!」
「だろ?俺もう五回食べてるから、言われなくてもわかんだよ」
「美味しい、ほんと美味しい~…」
りんご飴、「刺すより喰めば」にも出てきてたな。あれ、何かのキーアイテムなのかな。
…そういえば、俺が一番最初にりんご飴を食べたのって、きこさんが夏祭りでくれたからだった。
小さい頃、俺ときこさんと俺のお母さんの三人で、夏祭りに行った。
そこで初めて、きこさんに「美味しいよ」と言われて、りんご飴を食べた。
子どもながらに、俺は美味しすぎて、夢中で食べていたっけ。
「蒼真?」
そんなことを思い出していると、陽太に話しかけられ、現実に引き戻された。
「どした?」
「あぁ、なんか昔のこと思い出してた」
…というか。
「俺、陽太に伝えたいことがあって」
「え、何?」
俺は今日、陽太にきこさんのことを言おうと思っていたのだ。
「俺がいつも行ってる本屋でね、何年かぶりに、幼馴染と再会したんだよ!」
ぽかんとした表情の陽太から発せられた言葉は、自分の想像をはるかに裏切った。
「…は?」
「…え?」
少し沈黙の間が空いてから、陽太がその空気をさいた。
「いやいや、え?それが俺に伝えたいこと?」
「うん、そうだけど…」
くはっ、と大きく口を開け、陽太が笑い始めた。俺は意味が分からず、陽太に状況を説明すると、ますます笑われてしまった。
「俺そんな面白いこと言ったかな?」
「いや、面白いっていうか、特に重大な事じゃなくてよかったって思って。その話、また後で聞かせてよ。楽しみだわぁ」
俺は応援してるから~、と言う陽太に違和感を覚えつつも、何の弁当を買って帰ろうかを考えてしまっている自分に恥ずかしくなって、陽太の発言はどうでもよくなっていた。