「え、甜菜(てんさい)?俺、植物?」
「そっちじゃねぇ」
「あ、粉末?甜菜糖?」
「それはわざとか?もういっぺんやられたいのか」
「ヤダヤダ、暴力反対!」

前言撤回、こいつのは甜菜糖みたいに甘い。
おふざけが人間関係を壊すことがあるということを知らない。

「言っとくけど意外とわかりやすいからな、清夏」
「は?」

威圧的な声が出る。

俺がわかりやすい?
人の気持ちに疎そうな猪野に気付かれるほど?

有り得ない、などと思っているとそれを見透かされてしまう。

「わかりやすいぞ。緑野さんが鈍感なのかは知らないけど、ある程度勘の鋭い奴ならわかるからな、俺みたいに」

ショックだった。

大空は昔から鋭いというか、人をよく見ている。
中学の定期テストであまり良い点数を取れなくて落ち込んでいた時も原因とその教科まで突き止めた。
たまたま外であった俺の母親を人目見ただけで気分が悪いのだと気づいたこともある。
ちなみに、俺は全く気が付かなかった。

そこが大空の良い所でもあるのだが……猪野に気付かれているとなると大空も気がついている可能性が高い。