「悲しいなぁ」「こんなのいじめだよ、もう」と独り言を繰り返す猪野に流石に言い過ぎだと反省し、好物のフィナンシェを奢ることにした。

それを伝えると一瞬で機嫌を直して調べ学習を再開する。

今回は、一人一か国を決めて二人一組となり、その国の魅力や文化を発表することをゴールとする授業の一時間目。
まずは気になる国を調べて一か国を厳選する。

ちなみに、俺のペアは猪野。
同じくヨーロッパが好きなおちゃらか系クラスメイトと一緒だ。
大空と関わりの多い俺を羨ましいというのは大抵こいつだ。

俺も一人一台持っているパソコンで色々な国について検索する。

イギリス、フランス、アイスランド、ウクライナ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、ベルギー、フィンランド。
ヨーロッパには約五十の国が含まれるとされていて東西南北で区分ができる。

俺がこの授業で選んだ一か国はフィンランド共和国。
首都はヘルシンキで公用語はフィンランド語とスウェーデン語。
北ヨーロッパに位置する共和制国家だ。

フィンランドを選んだのは大空がムーミンが好きだから。

ムーミンはトーベ・ヤンソンというフィンランド出身の女性作家によって生み出された小説。
シリーズ九冊まで出ており、大空はスナフキンとムーミンが好きだ。