大空は俺の初恋相手で、告白をしてフラれたら、卒業で切れる縁を卒業前に自分から切るようで怖くて言えない。

だから、留学をしたい気持ちと大空との残りの時間を大切にしたいという気持ちが押し合いをしているんだ。

大人になったら海外に行くと決めているんだから高校留学は無理しなくてもいいのではないか。
それなら、一番多く関わってきた幼馴染として、好きな人として大空との時間をもっと充実したものにしたい。
そういう葛藤が渦を巻く。

逃げているくせに一丁前に悩んでしまう。

「……か。清夏!」

俺を呼ぶ声にハッとして意識が現実に引き戻された。

「何回も呼んでんのに無視すんなよぉ。大事な調べ学習中なんだから、俺のことも考えてちょうだいな」

下手な女性の演技に思わず顔を歪めた。
こいつが女装でもしたら目にいれられないほどの下手物になってしまいそうだと失礼過ぎることを思う。

「やめろよ。何も言わずにそういう顔すんのが一番傷つくんだからな!」
「だったら、その下手くそな演技もやめてくれ。猪野(いいの)のそれは化け物だ」
「お前、辛辣にもほどがあるぞ!?ちょっとはオブラートに包んだり、声に出さないようにしたりしろよ」

俺は基本的に男には多少厳しく接するタイプだ。