あいつ、話してみたいだの言い寄ってきたくせに俺の知らないところで自分からいってんじゃねぇか。
その相手が大空なのもイラつく。

「眉間に皺寄ってますよー」

横に並んで歩いていた大空が俺の顔を覗き込んでくる。

Smile, smile(笑って、笑って)

指で俺の口の端を上に引っ張り、無理矢理笑わせようとしてきた。

「いひゃい」
「やだ、清夏の肌もちもち」

すぐにやめてくれるかと抵抗しなかったせいで大空は俺の頬を抓る。

こんなこと道端でされたら恥ずかしさで可笑しくなるに決まってるだろ。
それなのに、大空の手を振りほどいたらどう思われるかが不安で何も手を出せなかった。

「ひゃめろ」
「……なんで言葉でしか嫌がらないの?」

手を離さず大空は不思議そうに聞いた。

「それ、私に触られるの嫌じゃないんだって誤解されるよ」

俺は大空の手を掴んで俺の頬から離す。

「大空は、今のでそう思ったの?」
「……そう、だよ。思っちゃうから言ったの。そういうのは好きな子にだけ許すんだよ」
「なら、いいじゃん」
「え?」

大空の手をぎゅっと握る。

この状況に対して緊張も興奮もしなかった。

ただ、当たり前のようにするりと言葉が出てきた。

「俺は大空が好きだから」