自分と同じ道を歩もうとしている俺にやめろとは言わなかったから。
同じ寂しさを味わせないように、なんていうお節介で選択肢を減らすことはしなかったから。

それが朔凪の優しさだと理解して胸が温かくなる。

「だからさ、清夏も今を頑張りな。結局どうにか決めなきゃいけないんだから留学に行った後を考えるより今を一生懸命生きて、今を良い方向に進みつつ、その努力を未来の自分を奮い立たせる糧にしな」

声だけなのに、朔凪が満面の笑みで背中を押そうとしてくれているのが見えた。

「……大空が、今日帰ってくるときに言ってた。俺が留学しようと、好きな子と一緒にいることを選ぼうと、最終的には俺は夢を叶えるための努力はやめないはずだから、どの選択でも夢を叶えられるように応援してるって。大空は俺を信じてくれてる」
「うん」
「俺はそれが嬉しくて、でも同時に危機感も強くなった」
「その危機感も糧にすればいい」
「焦りも?」
「努力も危機感も焦りも、どんなものだって自分にとってプラスのものにするかは自分次第なんだよ。不可能を可能にするのだって自分に起きていることをどれだけ自分の経験や能力にできるかだと思う」

なら、俺の選択肢は一つになった。