テレビ電話ではないことを忘れて、小さく頷く。

大空は生徒会本部役員で目立つし、綺麗だ。
俺のいない間に何が起こるかわかったものではない。

「私もそうだった」
「え、意外」
「私も高校留学の経験があるから。清夏みたいに好きな人じゃなくて親友でね。離れるのが本当に寂しかった」

朔凪らしくないしんみりした声。
きっとその頃を思い出しているんだろう。
そして、それは何年経っても忘れないほど強い思いなんだ。

「私は今、日本にいるし、その子は比較的すぐに会える距離に家があるからそういったことを感じなくて済んでる。だけど、いつまたそう感じる日が来るのかわからない。それは私だけじゃない」

大切な人が簡単に会えない距離に行ってしまう、もしくは自分が行くことになる。

留学を希望する俺じゃなくても、その不安は見えていないだけで誰にだって背後に存在している。

「でもね、私はだからこそ頑張るんだ。会えなくなるかもしれない可能性を頭の片隅で考えながらも大切な今を、一日一日を、たとえそばにいなくても、大切な人と一緒に頑張って生き抜くの。もう無理だってなった時に、そんな頑張った自分と大切な人を思い浮かべて挫折しそうになった自分を奮い立たせるんだよ。あの子も頑張ってるんだから私もって」

朔凪は俺に自分を重ねていた。

嫌だとは思わなかった。