「どっちもやっちゃえ」

無茶を言い出した。

「大空に異性として見られるように頑張りながら留学の諸々も同時進行で頑張る」

留学の語学や文化の勉強と並行して大空に近づく。
どっちかを選択して頑張れではなく、どっちも頑張れ。

無茶が過ぎるし、何より俺の根本的な解決になっていない。

俺は留学が終わるまで大空に会えないことが嫌なんだ。

今頑張って万が一、上手くいって大空に異性として見られても留学に行ってしまえば約一年間は会えない。
それじゃあ、頑張りも水の泡。

「独占欲強いねぇ」
「は……違うし」

独占欲強いと言われるとマイナスなイメージがあって反射的に答えていた。

そんな俺の考えを見透かしたような笑いが聞こえる。

「いいんだよ、強くて。それくらい強い方が愛されてるって感じるんじゃないかな」
「そういうもんなの?」
「そういうもん。留学を躊躇う気持ちもわかる。面と向かって会えないのは辛いし、その間に大空に彼氏ができたらって思ったら、行きたくもなくなるよね」