電話を告げるスマホの音に、スマホ越しの大声。
俺の耳が壊れる。

「なんだよ」
「なんだよって何。ちゃんと申請かけてくれたと思ったら電話してこないから、こっちから電話してあげたのに」
「ああ、そういえばなんか言ってたな」

大空のことで頭いっぱいで朔凪と会ったことも記憶から消えかけていた。

仰向けのままだと喋りにくいので起き上がってから話を促す。

「流石に仕事をサボってとかないよな」
「失礼な。今は休憩中。一時間はあるからじっくり話せるね」
「用件は?」
「さっさと済ませようとしてんじゃないよ。せっかくお姉さんがお悩み中の清夏くんにアドバイスをしてあげようと思ってるのに」

朔凪に俺が悩んでいることを見破られていて、少しビクッとする。

「なんのこと」
「隠そうとしなくていいよ。大空のこと、好きなんでしょ」

初めから声のトーンを低くしていたおかげで上手く誤魔化せたと思いきや、バレバレだった。

表情を見ていなくても隠そうとしていたことが分かっているということは、俺の声にそれだけ感情がのってしまっているんだろう。
猪野にも朔凪にも色々とばれているようだし、俺は嘘も隠し事も向かないみたいだ。

このまま大空の前で隠し続けても時間の問題。
今まで気づかれていないようなのも不思議な話だが。