言ったような気もする。
そんな語彙もないし、流暢に喋ってはいないだろうが。

「清夏にとっても、高校生のうちに留学して向こうの文化とか雰囲気に触れることは夢への近道にもなるんじゃない?だって、極端に言えば船でこの川から海に行って、世界にも行けちゃうんだよ。それをめっちゃ頑張って泳いでるようなもんなんだよ!?」

目の前の川を指さして有り得ないまでに極端な話をされているけれど、言いたいことは分かる。

日本で得た知識を頼りに海外に行って慣れずにやっぱり無理でしたとなるより高校生のうちに実際に見て知っていたほうがいい。

そうすると、俺の夢を考えたら大空との時間よりも優先すべきは留学になる。

「夢は叶えたい」
「じゃあ……」
「だけど、残された時間を大切にしたいって思いも確かにあるんだ」

優先順位はついている。
ただ、今の俺の私情が過去や未来の俺のためにすべき行動をスムーズにさせない。

「清夏の頑固者。うじうじ考えてる時間の方が無駄だって」
「それも一理あるんだよな」

大空は俺に呆れたのか、溜息を吐く。

今まで明確な選択肢がある状況で迷うことはなかった。
欲のまま選んだこともあったけれど、全く優柔不断な人間ではなくキッパリと決めていたと思う。

そんな、時間は有限だと知っていて悩んでいる俺は大空のことになるとどうして無駄に時間を使って、明確な選択肢のある中、迷ってしまうんだろう。

夢の実現も大空もどっちも得たいと思ってしまう。

欲張りかもしれない。
でも、どうしても手放したくない。