大空は譲らず「清夏はヘタレだから」と不貞腐れた声で言う。

言い返せば同じ言葉が返ってくることがわかっていたので「もういいよ、それで」と折れた。
いつも俺は大空の押しに弱い。

「清夏は、夢を叶えたくないの?」
「え?俺、大空に夢の話したっけ?」
「……信じらんない。ムーミンの言葉が好きなんだって話してくれた時、あんなに聞いてて疲れるくらい熱心に語ってたのに」

全く覚えていない。

大空は俺の夢を知らないのになんで俺が国際科に入ったのか、留学しようとしているのか、何の疑いもないのだろうと不思議に思ったことはあった。
そういうものなのかもしれないと深く考えずに終わらせていたけれど、俺の夢を知っているのなら納得がいく。

「『ムーミンってすごいな。真っ直ぐに何かを感じてそれからパワーをもらって、言葉にしたり動いたり。俺さ、そうやって感じたことを素直に口にしたり、行動できるのが自由だって思うんだ。ムーミンの言う月が綺麗っていうのは俺の好きなヨーロッパとか含めた世界への憧れと似てると思う。俺も世界への関心とかを抱きながら、自由に生きたい。色んな所に行って色んなものを感じて。それが俺の思う自由で、夢なんだ』みたいなこと言ってた」