「ムーミンは!?」
「英語版ならある」

どうせなら教材にしようと思って英語版で全巻を買ったムーミン。

大空が見ているのは日本語版だが、俺の持っているのは英語版。
これらは全く同じ物語でも、多少の違いがある。
個々の本として見た時に、大空が知っているとは言い難い。

一番違う部分は全体の雰囲気。
言語別の細かなニュアンスの違いによる弊害だ。
翻訳家によって翻訳の仕方が違うので英語版の中でも違いがある。
だから、同じ物語でも全く同じとは言い切れないのだ。

俺はそれを感じるのが面白くて日本語版も買ってるのだけど。

「英語版ね……私には絶対に無理」
「照らし合わせて読んだら学びになるんじゃね」
「私はムーミンを楽しみたいんだよ。英語を勉強したいわけじゃない」

大空は一年生ながらに生徒会に所属してテストの点数は良くても語学だけは中学でも高校でも一度も俺を抜かせたことがない。
英語は学校で学ぶことができていればいいらしい。

ちなみに俺は国語も英語、第二外国語のフランス語も毎回九十五点以上。
この三教科は負ける気がしない。

「そういえば、清夏は何ヵ国語喋れるの?」

国際科は英語は勿論。
今はまだ一年生なので文法もほとんどやってないようなものだが、第二外国語として学んでいる言語を少しなら話せるという人が半数はいる。