「つーか、これ以外にももらえるってなると流石に置く場所なくなるな」

ほぼ独り言みたいで、我ながら不自然な繋げ方だとは思う。
が、これしか思い浮かばなかったのだ。

恥ずかしさのあまり体が火照り、咄嗟に鞄に入っていたペットボトルの水を飲む。

「清夏の部屋ってそんなに本置く場所少ないの?」

どう捉えたかは別として、幸い大空は会話を繋げようとしてくれた。

「いや、高さ百八十の幅、奥行き四十くらいのスライド本棚がある」
「ごめん、全く想像ができない。そんな本棚あった?」

スライド本棚は普通の本棚の手前にスライド式の棚がついている型のものやクローゼットのような見た目でありながら取手を引っ張ると本棚が出てくる型など色々なものがある。
この本棚の一番のメリットは一つ分の奥行が増える分、多くの本を収納できることだ。

この本棚を買ったのは高校に上がる時。
中学二年生辺りから本の置く場所がなく、散らかり放題だったため大空が部屋に入ることは禁じていた。
だから、大空は前の本棚しか見たことがない。

「なるほど。……それって相当大きい本棚だよね」
「ギリ三万いかないくらいだったかな」