「ヨーロッパ好きの清夏にピッタリでしょ?教科書に載ってない事ばっかりで面白いって朔凪が言ってたからどうかなって」
「最高。こういう本はいくらあっても嬉しい」
「良かった。ちなみに、その中世ヨーロッパだけじゃなくて古代、近世、近代、現代も私の家にあるからね」

素晴らしいとしか言いようがない。

ヨーロッパの歴史は一つの時代だけじゃ勿体ないことをよくわかっている。

だが、俺は大空を舐めていた。

更に出してきた本を見て「どこまで有能なんだ」と思う。

うっすらとした青緑のオーロラの表紙。

「"アメリカ、カナダの歴史"」
「留学はアメリカかカナダなんでしょ。ちょうどいいから買っておいた」
「文句なしの百点満点」

もらっておきながら文句なんて言うわけもないのだけど、俺が文句を言うような性格の世界線でもこのセットなら絶対に喜ぶ。

「イェイ」

大空が右手でブイサインをしながら笑う。

「ありがとう」
「どういたしまして」

大空の話が終わったのだと思い、ヨーロッパの本は鞄にしまってアメリカ、カナダの本の表紙に目を移す。

実際に見てみたいと焦がれるほど美しい。

「……再来年はこうやって直接は渡せないかもしれないんだよね」

大空がボソッと呟く。