モヤモヤしながらも店を後にして家に帰る。

心臓がうるさい時間も終わりだ。

ホッとするような、少し残念なような。

しかし、そんな気持ちを感じるのはまだ早かった。

「ねぇ、清夏」
「ん?」
「途中で少し話さない?」

ようやく心臓も静かになり、体の火照りも収まってくるかと思えば、まさかの提案だ。

それなのに、断れず承諾してしまう。

「あ、あそこの河川敷の階段にしよう」

暑さのせいか周りに人はあまりいない。

ちょうど日陰になっている場所に腰を下ろす。

「で、話って何?」
「これ」

大空は持っていた鞄から一冊の本を出す。

それを受け取ってタイトルを読んで、テンションが上がった。

「"ヨーロッパの歴史"」
「早いけど、誕生日プレゼント」

二週間後の土曜日は俺の誕生日。
去年はギリギリ夏休みで友達からはメールで祝われたんだっけ。

大空だけは連絡なしに家に押しかけてきて俺が玄関を開けた瞬間、クラッカーの破裂音と紙テープが顔に降りかかった。
紙テープの一部が目に入って痛かったな。

しみじみしながらページを捲り、中を確認する。