俺も理由は違えど驚いていた。

朔凪。
その名前に聞き覚えがあったから。

少し経ってからコツコツっという歩く音が近づいてくる。

「朔凪ー」

大空が小さく手を振った。

その先に顔を向けて俺は息を飲んだ。

「久しぶり。大空、清夏」
「やっと会えたぁ」
「四年ぶりぐらいかな?二人とも大きくなったね」

腰にかかるほど長い髪を一つにまとめ、オシャレな店の制服を着こなす女性。
聞き覚えがあるも何も、今目の前にいるのは大空のお姉さんだ。

昔から大空以上に男前でありながら、大人っぽくてかっこいいお姉さんでよく大空と一緒になって後をついて行っていた。

約三年間、食に関することを学ぶため色々な国を回っていたんだとか。
そして、ちょうど去年の夏、日本に帰ってきたのだ。
ところが、帰国後も自分の店を持ちたいと言って家族にも一度も会わずに店を建てることに一生懸命だったという。
良くも悪くも、決めたら一直線な人で落ち着くまで連絡もまともに取らなかったみたいだ。

それがようやく店を出して落ち着いたという連絡があったから、どうせならと俺も連れてきたらしい。
どうせなら、の意味が俺にはよくわかないが。

あまりにも会わず、話にも出てこなかったせいで名前を聞いてもピンとこなかった。
流石に、伝えたらさっきの大空以上に怒るのがわかっているので、喉に引っかかっている言葉を飲み込む。

今は久しぶりに会った喜びをかみしめるべきだ。