「大空のことを考えすぎて知恵熱、なんてことはないよなぁ……」

冗談のつもりで独り言を呟いたのにやけに現実味がある。
声に出すんじゃなかった。

カーテンは開けず、寝やすいように電気が消された部屋は暗い。

ほとんど知らない、熱が出た時特有の寂しさが込み上げてくる。
誰かに、そばにいてほしい。

俺はそれを紛らわすため、とにかく寝て、水分補給をして、寝た。

だが、睡眠にも限度がある。
午後は全く眠れず、運動も控えるべきかと思い、馬鹿みたいにベッドの上でぼーっと天井を眺めてやり過ごした。

そして、ようやく日も傾いてきた頃、インターホンが鳴った。

重い体を起こしてよろよろ一階へ下りる。

インターホンの画面を見て開けるか迷ったが、家が近いとはいえせっかく来たのだから追い返すのもなんだ。

マスクをして玄関の扉を開けた。

「やっほ」

来訪者は大空。
俺の母親から連絡がいったらしく、制服のまま、学校用の鞄を持っているところを見るに、帰らず学校から直接来てくれたのだろう。

リビングに通してお茶を用意しようとキッチンへ体を向けると「いらないから安静にしなさい」と座らせられた。

「それにしても、清夏が熱を出すなんて珍しいね」
「ああ。俺も驚いた」
「ちゃんと規則正しい生活してる?免疫の低下は不規則な生活が原因でもあるんだから」